第5章 「食育のまち」宣言とこれから

紀の川市では、平成22年12月16日、紀の川市議会で議決を行っていただき、「食育のまち 紀の川市」宣言を行いました。これは、近畿ではじめての「食育のまち」宣言となるものです。平成20年の紀の川市食育推進計画の策定から、平成21年の地方の元気再生事業を経て、紀の川市の食育の取組として一つの集大成と言えるものだと思います。

また、平成22年から24年まで、和歌山県の「わがまち元気プロジェクト」の採択を受けました。「食育のまち紀の川市」における農業の6次産業化と地産地消の推進に取り組むものです。

この事業により、「食育のまち 紀の川市」宣言とあわせて、紀の川市の食育の取組を市内外に発信していきたいと考えています。

(1)宣言にいたるまで
紀の川市では、平成18年11月、「暴力追放のまち」、「非核・平和のまち」、「生涯学習のまち」という3つの宣言について、市議会で議決されています。

「食育のまち 紀の川市」宣言は、紀の川市として4番目の宣言となるとともに、近畿ではじめての「食育のまち」宣言となります。

平成22年度当初、食育推進条例の策定も模索しました。が、紀の川市では、すでにしっかりした市食育推進計画が策定されているので、むしろ市内外に「食育のまち」をPRすることができる「食育のまち」宣言を市議会に議決していただくのがいいのではないかという話になりました。

このため、「食育のまち 紀の川市」宣言文について、紀の川市食育推進会議で案文を議論した上で、平成22年第4回紀の川市議会定例会の最終日、平成22年12月16日に満場一致で議決していただきました。

(2)宣言の趣旨
紀の川市では、日本有数の売り上げを誇るJA紀の里「めっけもん広場」などの農産物直売所や、健康バイキングを提供している青洲の里、学校給食への地場農産物の積極的な活用などにより、従来から食育を推進してきました。

平成20年9月には、紀の川市の市民運動として食育を計画的に推進し、すべての市民が心身ともに健全な食生活を実践し、生涯にわたって健康で生き生きと暮らせるよう、紀の川市食育推進計画『たのしい おいしい 『食』を育むきのかわ市』が策定されました。

また、平成21年度、地方の元気再生事業「食育のまち紀の川市~華岡青洲の生誕地から食育のまちづくりを発信~」により、食育メニューの開発、研修会の開催、食育の教育素材の開発、宿泊体験プログラムの開発等に取り組み、食育のまちづくりを進めてきました。

紀の川市民一人ひとりが心身の健康を確保し、生きる力を身につけていくためには、何よりも「食」が重要であり、食育は、全世代にわたって市民運動として取り組むべきものです。

また、今後は、食育を通した体験交流事業や加工品開発などにより、食育を観光や産業振興に結び付けていくことも大切です。

よって、紀の川市民が全世代にわたって市民運動として食育を推進するため、ここに「食育のまち 紀の川市」を宣言するものです。

(3)宣言文
紀の川市は、紀の川・貴志川の流域や周辺の山間地域など豊かな自然に恵まれ、いちじく、はっさく、桃、柿、キウイフルーツ、いちごなどの果実や米、野菜など四季折々の農産物が豊富に生産されています。私たち紀の川市民はこの風土に適した食を基本にして地産地消に取り組み、豊かな食文化を育んできました。

しかし、近年、食を取り巻く環境の変化などを背景に、食生活の乱れや食の安全の問題など、食をめぐる様々な問題が発生しています。

こういった中、心身の健康を確保し、生きる力を身につけていくためには、何よりも「食」が重要です。市民一人ひとりが食育を推進することで、自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への感謝の気持ちを育み、郷土に対する関心を高め、食に関する正しい知識とそれを選択する力を身につけていくことができます。また、食育を市民運動として展開するとともに、観光や産業振興も含めたまちづくり・人づくりに結び付けていくことも大切です。

よって、本市は、全市的に食育を推進し、市民や行政、あるいは家庭、保育所・幼稚園・学校、地域などそれぞれの立場から、共に学び、共に取り組み、共に実践できるよう、ここに「食育のまち 紀の川市」を宣言します。

「食育のまち 紀の川市」推進の柱

1 食事はおいしく、楽しみながらとりましょう。
2 生活リズムを整え、バランスのとれた食生活習慣に心がけましょう。
3 食の安全に対する知識を身につけましょう。
4 紀の川市でとれた食材を活用しましょう。
5 食育への関心を深めましょう。

(4)わがまち元気プロジェクト
「食育のまち 紀の川市」宣言とあわせて、和歌山県の助成事業である「わがまち元気プロジェクト」に取り組むこととなりました。わがまち元気プロジェクトは、地域固有の資源を活用したプロジェクトを実施する市町村を総合的に支援するもので、「1市町村1産業」の創出を目指すものです。

例えば、紀南のすさみ町では、イノシシと豚の交配種であるイノブタをまちおこしの核にすえて、「イノブタを核にした新複合産業の創出」を、紀北の九度山町では、大阪夏冬の陣の英雄・真田幸村が九度山町に身を隠した歴史を踏まえ「‘’真田・紀州九度山‘まちづくり」を進めています。

では、紀の川市で産業化を目指すべき素材は何があるのでしょうか。県やJA紀の里、商工会と議論をした中で出てきたキーワードが、「食育」です。

紀の川市で進めてきた「食育のまちづくり」の延長線上に、農業の6次産業化があります。6次産業化とは、1次産業である農業だけでなく、2次産業である加工、3次産業である販売を組み合わせて農業の付加価値を高めていく取組です。

紀の川市の基幹産業である農業を活性化していくためにも、農産物の生産だけでなく、加工・販売を組み合わせて、付加価値の高い「食」を提供していくことは重要です。この事業では、農業の6次産業化を進めることで、紀の川市で取り組んできた「食育」を産業化まで高めていくことを考えました。

紀の川市の「わがまち元気プロジェクト」の概要は、以下の通りです。

第1が、農業の6次産業化に向けた取組です。
紀の川市産の野菜や果物のカットやピューレなどの加工品を開発し、紀の川ぷるぷる娘を活用して販売促進を図ります。JA紀の里と商工会と市が連携して、農商工連携の枠組みの中で、「食育」をキーワードにした特産品開発も行っていきます。

第2が、地産地消に向けた取組です。
青洲の里を「食育の拠点」として機能強化していくとともに、スタンプラリーの展開などによって、めっけもん広場と地元飲食店の連携を強化します。

第3が、紀の川市からの「食育」の情報発信の強化です。
紀の川市食育推進会議のホームページの充実や食育フェアの市外での開催を行います。

“食育のまち紀の川市”6次産業化プロジェクト 取組の3本柱
①農業の6次産業化
②地産地消に向けた取組
③紀の川市農業6次産業化情報発信

紀の川市の「わがまち元気プロジェクト」は、平成22年度から24年度の3カ年での実施予定です。平成22年12月に行った「食育のまち 紀の川市」宣言とあわせ、紀の川市の「食育」を市内外にPRしていく原動力となることを期待しています。

(5)紀の川市の食育・これから
平成19年4月に紀の川市に赴任して以来、私は、「食育」にこだわったまちづくりに携わってきました。ただ、もともと紀の川市民や市職員の食育にかける想いが強く、私は教えられることばかりだったような気がします。

平成20年の市食育推進計画、平成21年の地方の元気再生事業、平成22年の「食育のまち 紀の川市」宣言と、紀の川市の食育のまちづくりに一貫して関われたことは、望外の喜びです。

「食育のまち」宣言とあわせて、「食育のまち紀の川市」のホームページも開設しました。紀の川市の食育関係のコンテンツを公開していますのでぜひご覧ください。

食育のまち紀の川市ホームページ

ただ、紀の川市の食育のまちづくりは、これからが大切です。紀の川市の農業に元気をだしてもらい、地産地消などの取組を通じて市民だけでなく市外から来ていただいた方にも、「食育のまち 紀の川市」を認識してもらうためには、今後の不断の努力が欠かせません。

紀の川市の食育の取組は、基幹産業である農業の振興と切り離すことはできません。また、食育を加工品開発や観光などの産業化と関連づけていくことも大切です。

今まで紀の川市で食育を推進してきていただいた市民・市職員の皆さんに改めて感謝するとともに、今後の紀の川市の「食育のまちづくり」がますます発展していくことを祈念しています。