紀の川市は、県下第一の農業生産額を誇ります。特に果物については、全国1位のはっさく・いちじく、2位の桃、3位の柿をはじめ全国有数の生産額です。
ただ、紀の川市の農業産出額を10年前と比べてみると、233億円(平成7年)から161億円(平成17年)と、72億円も減っています。これは、農産物価格が下がるなどの外的要因と、農家の高齢化が進み耕作放棄地が増えるなどの内的要因があります。
ここで問題になるのは、紀の川市のほ場整備が進んでいないことです。ほ場が小さく、農道がせまく水路も引かれていない状況では、農地を人に貸すこともままなりません。
ほ場整備は、農道や水路、区画整理などの整備を総合的に行うもので、農業の生産性の向上だけでなく生活環境の向上にも貢献します。
紀の川市では、中村愼司市長のお膝元である貴志川町の各地区をはじめほ場整備の先進事例があります。
中でも、貴志川町西山地区では、ほ場整備を行った結果、後継者が何人も帰ってきたそうです。ある後継者はコンピュータ関係の仕事に従事していたのですが、今は、ほ場整備をした農地でキュウリづくりに取り組んでいます。「ほ場整備がなければ、農業に携わらなかった」と言われています。
和歌山県の水田のほ場整備率は、3.6%と全国平均の61.3%と比べて極端に低い状況です(農林水産省・農地の整備状況(平成20年))。私が昔住んでいた新潟県では、30アール区画の整備は昭和40年代に終わり、すでに一ヘクタール区画の整備を進めている状況でした。一方、紀の川市では30アール区画の整備も終わっていないところが大半です。
中村市長も、常々貴志川町など紀の川の河南で進められてきたほ場整備を、旧打田町など河北で進めていく必要があると言われています。
ほ場整備は、個人の財産である農地を扱うため、関係者の同意を得ることは大変な作業となります。しかし、水路や農道の不具合や農地の集団化、耕作放棄地の増加などの問題が、ほ場整備を行うことで一気に解決します。
紀の川市では、『ほ場整備でかわらなきゃ!』というパンフレットを作成して、旧打田町地区を中心に説明会を開催し、ほ場整備の啓発普及につとめています。

説明会に参加した農家からは、「高齢化して後継者もいないので難しい」、「負担金を出してまで整備したくない」など後ろ向きの声も聞かれますが、辛抱強く推進する中で、地区を引っ張ってくれる農家がでてくることを期待しています。
また、市担い手育成総合支援協議会にほ場整備推進部会を設置しました。ほ場整備の実施済みの地区とこれからほ場整備をやってみようという地区の役員さんに情報交換をしてもらい、ほ場整備の機運を高めています。
紀の川市の農業の将来は、ほ場整備の推進にかかっているといっても過言ではありません。
ぜひ、農業委員会のみなさまにおかれましても、市の農業振興を図る観点から、地元でほ場整備を推進していただくよう、よろしくお願いいたします。
(平成22年8月10日紀の川市農業委員会講演)