(13)紀の川市商工会に期待すること

本日は紀の川市商工会の皆様の前でお話しさせていただく機会をいただき、大変名誉なことと考えています。

また、平成21年7月の紀の川市商工会の発足に当たっては大変なご努力を頂きましたこと、改めて敬意を表したいと思います。

実は、私のルーツは商売人です。祖父の代に、神奈川県平塚市で紙や文房具を扱うお店を創業し、現在、私のいとこが店を継いでいます。平塚に七夕まつりというおまつりがありますが、その創設にも祖父が深くかかわったそうです。

ただ、神奈川県の中核市とはいえ、本市と同様、商工業者のおかれている現在の状況は厳しいようです。

父は四男坊だったものですから大阪の会社に就職してサラリーマンをしていましたが、よく父から商売人の大変さなどを聞かされてまいりました。

こういった中、私が紀の川市の担当部長として商工行政に関わる立場にさせていただいたのは、ある意味運命的なことだと考えています。

本日は、市内の商工会や商工業者の方々とおつきあいさせていただく中で、日々感じていることなどをお話しできればと思います。

◆紀の川市行政と商工会の連携
紀の川市では、新市発足以来、商工会と連携して商工業の振興を図ってまいりました。

毎年、市で助成して商工会にプレミアム商品券を発行していただき市内の商店街での買い物を促進しています。小規模事業者への利子補給も市が助成しています。その他、国・県の補助事業も商工会と連携して対応しています。

紀の川市プレミアム商品券

平成20年に総務省の補助を受けた「粉河とんまか通りモニュメント事業」や平成22年度からはじまることになった「わがまち元気プロジェクト」も、市と商工会が連携して、国・県の助成を受けた取組といえるでしょう。

ご存じの通り、商工会には、商工業の総合的な発展を図る「経済団体」としての性格と、地区内の小規模業者等の経営改善普及事業を実施する「指導団体」としての性格があります。

私が最近つくづく思うことは、市内の小規模業者へのきめの細かい対応について商工会の「指導団体」としての役割が極めて大きいということです。

市行政では、個人商店の経営状況を把握して専門的なアドバイスを行うことは、難しい部分があります。きめ細かい対応ができる商工会の存在があってこそ、市内の商工業の振興ができるのではないでしょうか。

◆商工業の発展のために
紀の川市内の商店街は売り上げが減少しているところが多く、閉店する店が増えています。

この原因は、景気の低迷や公共工事の減少、規制緩和などの外的要因が大きいと考えられます。

今までのように商店街に店を構えていれば一定の収益を確保できた時代から、何らかの「工夫」がないと生き残ることがさえできなくなり、小規模事業者ほど後継者もなく店じまいしてしまうという状況になっています。

これは、紀の川市だけで起きている現象ではなく、例えば、東京の早稲田の商店街などでも厳しい状況があるようです。

こういった中、紀の川市の商工業が生き延びて発展していくためには、商工業者一人ひとりの「やる気」を喚起していかなければなりません。

私なりに紀の川市の商工業発展にむけていくつかの提案をさせていただきます。

第1が、紀の川市の基幹産業である農業との連携です。

紀の川市は、全国有数の果物生産を誇る果物王国です。日本一のファーマーズマーケットめっけもん広場もあります。せっかく近くで安全・安心な農産物が生産されているという立地条件を活用しない手はありません。

紀の川市産の農産物の加工・販売を紀の川市の商工業者が担うことで農商工の連携、農業の六次産業化を進める絶好の環境があると言えます。

最近お隣の和歌山市でJAと商工会議所、市農業委員会が連携して、「しょうがジンジャーエール」が開発されました。和歌山市特産のしょうがを活用した健康飲料ということで全国に出荷し人気を博しています。

紀の川市でも、JA紀の里と商工会が連携すれば、豊富な紀の川市産の果物、例えば、桃、柿、はっさく、黒豆などを活用したお菓子や飲料を農商工連携の枠組みの中で開発できるはずです。

また、その際に着目していただきたいのは、紀の川市のブランドとしての「食育」です。

平成22年12月議会で、近畿初となる「食育のまち」宣言が採択されました。また、平成22年度から3年間、県の「わがまち元気プロジェクト」の助成を受けて、農商工連携の枠組の中で加工品の開発を検討する予定です。

この加工品に関しては「食育」へのこだわりを徹底していただきたいと考えています。商品のパッケージに食事バランスガイドに基づいたカロリー計算を入れるなど栄養バランスも考えたものであれば、「食育のまち紀の川市」の良いイメージと連動して、必ずヒット商品になると思います。

「はっさくプーロ」など従来から商工会でつくられてきた加工品も大切にしながら、「紀の川ぷるぷる娘」を活用した新しい「食育のまち紀の川市」らしい商品の開発を、農業との連携の中で取り組んでいただければと思います。

第2が、紀の川市にある観光資源の活用です。

紀の川市にはたくさんの観光資源があります。これらの資源との連携を通じて、市内の商工業の発展を促していきたいですよね。

JA紀の里めっけもん広場に来られるお客さんは80万人いるそうです。これはレジ通過者だけの人数ですので実際にはその数倍もあるということです。このお客さん達を何割かでも引き留めて紀の川市でお金を落としてもらう仕掛けをつくることを考えていきたいものです。

貴志川線貴志駅の「たま」駅長も、全国区の人気を博していますし、桃の花が咲きほこる桃源郷、健康バイキングが人気の青洲の里など集客力のある観光交流施設の活用も考えていかなければなりません。

例えば、「食育」にこだわった紀の川市産のみやげものの開発を行い、紀の川市に観光に訪れていただいた方々に提供していく努力が必要です。

第3が、紀の川市の歴史・伝統文化に基づく資源の活用です。

紀の川市には、国宝が二つあるのをご存じでしたか?

粉河寺の草創を描いた粉河寺縁起絵巻と、鞆渕(ともぶち)八幡(はちまん)神社にある沃懸地螺鈿(いかけじらでん)金銅装神輿(こんどうそうみこし)です。

平成21年現在、国宝の存在しない県が3県(群馬・徳島・宮崎)あることからみても、紀の川市は、深い歴史を背景とした文化財の宝庫といってもいいと思います。

平成20年粉河とんまか通りに粉河寺縁起絵巻などを描いたモニュメントを制作したのも、粉河寺に来ていただいたお客様に商店街も歩いてもらおうということがきっかけでした。

粉河寺

また、粉河酢などのように、今は途絶えてしまったけれどかつて全国区のブランドを誇っていた特産品もあります。こういった資源を発掘し活用することが、商工業の振興にもつながっていくのではないでしょうか。

平成22年11月、紀の川市商工会が事務局になって「粉河」に関する知識の検定を行う「粉河検定」がスタートしました。紀の川市の歴史・文化などを楽しみながら市民に覚えてもらうという意味で、大変意義のあることだと思います。将来的に「紀の川市検定」まで発展させていく考えをもっておられると聞いています。今後の取組の進展を期待しています。

粉河検定

 

 

◆ピンチをチャンスに

言うまでもなく、紀の川市の商工業を発展させていくべき主体は、市の行政でも商工会でもなく市内商工業者の皆さんです。
リーマンショック以降の不景気の中、商工業者の皆さんが「やる気」を出すのは難しいかもしれません。

しかし、現在の状況を活かして、ピンチをチャンスに変えていけるのは皆さんの力しかありません。

今後とも、市行政と商工会事務局が連携して、紀の川市の商工業を盛り立てていきたいと考えています。

本日は、ご静聴ありがとうございました。
(平成23年2月4日紀の川市商工会理事会講演)